Maintenance 研ぎ方・お手入れ・
砥石について

修理について

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研ぎ方

柄の持ち方

柄の握り方は簡単なようですが、これを間違えると上手は研ぎはできません。

  • 右手の持ち方

    右手の持ち方

    表(刃の方)を研ぐ時は、人差し指を棟(背)にあて、親指を平面にあてます。包丁の元の方を研ぐ時はこのままの握り方で柄の方へ移動させるだけです。包丁の裏側を研ぐ時は人差し指を平面にあて親指を棟にあてます。

  • 左手の持ち方

    左手の持ち方

    左手の持ち方は特に重要です。人差し指、中指、薬指をあてます。これは写真のとおり一直線に揃い、常に砥石の中心にあるようにしながら包丁を前後へ押し出します。つまり包丁の研いでいる部分が先か根元かにより、包丁の身の位置はずれていきますが、指の位置は常に砥石の中心になければなりません。

悪い指のあて方

  • 悪い指のあて方

    写真のようなあて方をすると、必然的に砥石の外側へ指が出るので薄手の包丁はたちまち狂いを生じたり、刃割れが出たり、色々な弊害が伴います。
    また指のあたらない処はいわゆる空回りをしているのと同じで、折角砥石にあてても、その部分には完全な刃がつきません。

角度

包丁を砥石にあてる角度は何度くらいが適当なのか、これは大方の疑問だろうと思いますが余り度数にこだわる必要はありません。(鰻、鰌包丁は別ですが)目安として刃の部分の幅の半分程度を砥石にあてるようにすればよいです。
これがそれぞれの包丁に応じた自然の角度となります。
しかし言うまでもなく、切れ味は刃先が重要なので、力の配分はやや刃先の方へ重点を置いて研いでください。
また手元が狂うと丸っ刃や急刃になりやすく、努めて安定させることが重要です。
自然の角度・・。この要領で研げば包丁の鎬(しのぎ)も崩すことなく、刃並みもそこなわず、原形を保ちながらいわゆる切れる包丁として満足に使い続けることが出来ると言えます。

二段刃の角度

  • 二段刃の角度

    鰻・鰌の包丁は俗に言う二段刃(刃先が急角度)ですが、この角度は人によって多少の違いはありますが、標準としては45度位です。右手の持ち方は普通の包丁と同じですが、左手は異なります。
    まず親指を裏側の平面に当てます。人差し指、中指、薬指を棟にに当てます。
    この際指先を表側へ曲げてはいけません。
    二段刃が厚くなると切味が鈍りますので、刃の肉を研ぎ卸す事が重要です。

裏表の研ぎの回数

この割合は常識的には表が8割、裏が2割と心得えてください。殆ど裏側を研がない人がいますが、例外を除いて必ず裏を研がなくてはなりません。
但しみだりに研ぎすぎることは禁物で、8対2あるいは9対1程度と考えてください。

裏の研ぎ方

これは刃先を立てず、ピタリと砥石に当てることです。これは包丁に限らずノミや鉋(かんな)類でも同様で、裏研ぎの大原則ですので注意してください。
裏表の基本を守りながら、反対側へ「かへり」が出るまで研ぎます。
このかへりとは、刃先に指を触れるとザラザラとしたささくれのようなもので、これが現れて初めて刃が付いたものと理解してください。
ここで肝心な事は、砥石に余り水を掛け過ぎてはいけないと言う事です。
砥石の泥(研糞(とくそ)という)を洗い流すように水を掛けると刃が付きにくいからです。
研糞は重要な作用をする物ですので、水を掛けすぎず適度に砥面に蓄えて研がなければなりません。これが刃付けの秘訣であり、本焼物は硬いので特にこの要領が肝心です。

両刃物の研ぎ方(牛刀など)

洋包丁のように全く鎬(しのぎ)の無いものはどこを研いだらよいか…。
これは俗に言われる蛤刃になっていて、両面同じように、ふっくらと肉を持たせて蛤のような具合に出来ているので、両面共に包丁の幅の1/5程度の処を砥石に当てるような感じで研げば蛤刃の利点を損なわず適度な角度を保つ事ができます。
なお洋包丁は全鋼ですので、個人の好みによって片刃気味に研いでも一向に差し支えありません。

かへりは合砥(仕上砥)を掛けて

合砥を使わないでかへりを取るには、前述の刃付けをする時と反対に砥糞の出ないように充分に水を掛けながら、軽く撫でるように研げばある程度のかへりは取ることができます。しかしこれでは本当の刃が付いたとは言えません。
完全な刃を付けるには合砥が必要となります。
合砥は最終の仕上砥であり、これで研いで本当の刃が出来あがりますので、ここで初めて刃物本来の真価を発揮して冴え返る切味と共に、いわゆる長切れがするようになります。

手の動かし方や、リズム感、砥石の使う範囲等にご注目ください。

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お手入れ

研ぎ上げる以上に大切な事は日々の手入れです。

手入れ次第で切れ味、ひいてはその包丁の寿命そのものが変ってきます。
1日の仕事が終わった段階で必ずその晩の内にクレンザーや弊社製品である「錆取り」を用いて包丁の汚れ(水垢や錆びなど)を洗い落としてください。鉄の錆びは簡単に落ちますが、鋼の錆びはなかなか取れにくいので、片刃の包丁は裏側(裏側が鋼です)を重点的に磨いてください。

本焼製品、牛刀類は全部鋼で出来ておりますので、包丁の両面共に同じように磨いてください。
盤台に入れて置くと、包丁に水垢の斑点が付くことがありますが、これは一晩経過してしまうと容易には取れにくくなるので、その晩の間に磨き落とすことを心がけてください。特にお寿司屋さんの場合は、酢を使用する関係で、鋼には悪影響であり、手入れを怠ると錆びだけではなく、酸によって鋼はどんどん腐食していってしまうので注意が必要です。磨き上げたら水気を充分に拭き取ってください。

つまり包丁を研ぐ事は都合の良い時いつでも結構ですが、磨く事は必ず仕事の終りに行ってください。このようにして手入れをされた鋼鉄は見事な光沢を保ち、いつも清潔に気持ちよく使用する事ができます。なお、しばらく包丁を保管するような時は特に水気を取った上で、全身にむらなく油(植物油でよいです)を塗り、新しい布や新聞で包み、湿気の無い場所に保管します。

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砥石について

包丁と砥石これは車の両輪のようなものです。いかに優秀な包丁でも砥石が粗悪では切味はおろか刃を傷うことになってしまいます。
高級な包丁程、砥石には細心の注意が必要です。

砥石の種類

この順番で研いで行きます。

  • 1. 荒砥(金剛砥)※必要に応じて使用してください

    1. 荒砥(金剛砥)※必要に応じて使用してください

  • 2. 中砥(赤砥か青砥)

    2. 中砥

  • 3. 合砥(仕上砥)

    3. 合砥(仕上砥)

※砥石の種類を問わず、使用する前にはバケツに水を入れて砥石に充分水気を含ませてください。
15分~20分程度を目安とし、以後常時充分に水気を含んだ状態のまま使用してください。水分が足りなくなると、包丁の砥石への当たりが悪くなってしまいます。

※どんなに研ぎの技術がある人でも、砥石の面(砥面)が凹んで水溜りが出来るような砥石を使用したならば、上手に刃付けをすることはできません。これは的確に砥石に刃が当たらないためです。これには砥面をその砥石よりも荒い砥石で定期的におろすことです。

天然と人造について

天然の荒砥に代わり現在ではほとんど金剛砥を使用するようになりました。
金剛砥の特徴としては地金を卸す事が早く、天然砥の比ではありません。したがって出刃のような厚手の物や、牛刀のような油焼の物は影響は少ないですが、和包丁には使用上注意が必要です。
正しい方法で使用すれば研ぎ上げるのが天然砥よりも早いというメリットがあります。ただし誤った方法で掛けすぎてしまうと鋼が極端に薄くなってしまい寿命を縮めてしまうことがあります。

中砥についても現在では天然砥は稀で、ほとんど人造となっています。かつての天然砥は当然ながら製品によってばらつきがあり、割れることも珍しくなく、そのロストが価格に考慮され価格的には高価でした。
現在では人造砥が普及し、特徴としては割れることはほとんどなく最後まで安心してお使いいただけます。

合砥についてもやはり人造砥が主流です。天然砥について弊社でも用意がございますが価格も高価で、人造砥比べると10倍以上です。